コロナ後のこれからの駐在員に求められるミッションと人材像とは?現役の中堅駐在員が説明!

2022年5月12日キャリア

コロナ後のこれからの駐在員に求められるミッションと人材像とは?現役駐在員が説明!

コロナ後の駐在員に求められるミッションと人材像とは?

欧州駐在員のコーカス(@kkrchuzai)です。

私も段々と会社で中堅になりつつあり、最近は「この駐在のシステムはどこまで持続可能で、どうしたらもっと良くなるだろうか」と考えるようになってきました。

この記事では、2社で2度の駐在経験がある欧州駐在員の私が考える「これからの駐在員に求められるミッション、人材像」について書きます。

Disclaimer:いや、私ぜんぜん社長とかではないですしただのイチ中堅の駐在社員なんですが、そういう中堅社員として「自分がこういう風になっていかないといけないなぁ」と自戒していることを書くまでで、偉そうに講釈したいわけではないです。

駐在員のミッションは3つの点で変化している

コロナ渦によるリモートワークの普及などで、「日本にいながらリモートで出来る仕事を駐在員にやらせる必要はない」「出張で済むのであれば駐在員を出す必要はない」という意識は各社に普及してきました。

加えて、日本企業の世界でのプレゼンスの低下はここ10年間で継続しており、日本市場の成長にも限界があり、色々な会社の事業計画を見ていても「新たな成長の種を海外で見つけて育てていこう」という企業は一貫して増えているようです。(もう一つはベンチャー、イノベーションですね、もうこれ大企業は十年くらい前から言っている気がしますが)

コロナ後になりつつある今、改めて考えてみると、どうやらこの辺りは今後もトレンドとして変わらなそうです。そう考えると、直近の数年間は数年後から振り返ったら、駐在員の新時代の到来、であったと言えるかもしれません。(大袈裟ですかね?)

そんな新時代で、私は以下の3つの点で駐在員に求められるミッションが変化してきていると考えています。

①連続的な成長から、非連続的・加速度的な成長が目標に

「既存の事業の延長線上をやっていくだけなら、わざわざ駐在員を高いコストをかけて何人も送る必要はない(管理のために1人くらいは必要かもしれないけど)」

そう考える企業が増えていくと考えています。

既に確立されたビジネスモデルを持つ事業では、海外の現地社員の登用がどんどん進んでいます。実体験として、私の昔勤めていた日系企業でも、現在の会社でも、話に聞く周りの会社でも、海外支社や子会社の現地社員の経営陣への登用/起用はゆっくりですが着々と進んでいます。

コスト面での駐在員削減意欲に加えて、昨今のDiversityを重視するトレンドが、現地社員の活用に繋がっていると思います。

そして、今後も、日本人駐在員の方が現地社員よりコストの高い大半の国では、こうした現地社員の活用はますます進んでいくと思われます。既存の事業を普通に伸ばしていくのであれば、現地社員の登用の方が現地社員のモチベーションも上がりますし、コストも抑えられますし、現地市場に根付くこともでき、好ましいことばかりだからです。

一方で、それにもかかわらず日本人駐在員を送るのはどういう場合でしょうか?

財務周りを一応本社からの「お目付け役」としてみておく、という役目を除けば、それは、やはり既存事業の非連続的な成長、成長を加速させる取組(M&Aや他企業とのアライアンス、近接領域への進出等)を推進するための、本社からの増強人材として送り込む場合ではないでしょうか?

こうした背景から駐在員のミッションは非連続な成長、成長の加速、といったものがより重要視されていくようになると思います。

②全方位・全地域での駐在員派遣から、特定の国や地域に深く入り込む方針に

周りの各企業を見ていて、駐在員を送って事業を行う国も各社がメリハリをつけて選んでいく傾向が出てきていると感じます。

これには以下のような理由があるかと思っています。

資本市場からの「選択と集中」のプレッシャー

先ず、資本市場から、全方位での成長を目指すのではなく明確に勝てる市場に資源を集中し成長をすべきというプレッシャーが強くなりつつあること。色々な会社の事業計画を見ると、「選択と集中」といった言葉が良く書かれています。
ウクライナでの戦争を始めとした不確実性の高まりも「自社の強みがある比較的成長性の高いいくつかの市場に限られた資源(ヒト・モノ・カネ)を集中しよう」という企業戦略に繋がっていると思います。

海外展開がひと段落しており、見直しの時期に来ている

次に、駐在員を送っている企業は(アフリカ以外は)既にここ10年間で進出してきた歴史があり、その中で取捨選択をする判断材料が整いつつあること。また、コロナ渦で赤字となった事業もいくつかあること。
JETROの調査がわかりやすいのですが、今後の海外事業展開の方向を「拡大」と答えた割合はコロナ渦前の2018年以降低下していたとわかります。更に、地域ごとで事業拡大の意向を持っている企業の割合は濃淡があり、南西アジア(インド)やオランダ、ブラジル、ベトナム等は拡大したいと考えている企業が多いとわかります。
(この辺は2010年代初頭の中国進出ブームを覚えている私からすると驚きです)

*出典:ジェトロ 2021年度 海外進出日系企業実態調査―全世界編―

尚、実体験として私が昔いた日系企業も、最近は南米・アフリカ地域は強みが小さいということで駐在員の数を縮小し、アジア地域に人員をシフトしています。

海外人材の数に限りがある

最後に、日本採用の社員で海外に送れる人員に限りがあることです

博報堂の生活定点の調査結果からわかるように、海外で働きたいという人は全体として横ばいである一方、特に(家族構成などから)海外に送りやすいと言われる若手は減少傾向にあります。

博報堂調査:海外で働くのに抵抗がない人

どの企業も海外人材を採用しリテインするのに四苦八苦しています。限られた人員を、成長性の高い市場に選択的に振り向ける必要がありますし、限られた人材として、特定の国や地域に強い・若しくは行く気のある人材を採用・リテインしていく必要があります。つまり、中国に駐在していてそこで現地に溶け込んでうまくやった人を、次はマレーシアに送る、といったようなことは少なくなっていくのではということです(勿論業種・専門性によりますが)。

実体験として、海外人材のリテインが難しいのは私の勤務先でも同様で、「優秀な若手なので是非海外駐在に!」と思っていた人が、海外駐在はあまりやりたくないし国内転勤なしの企業で良い先が見つかったので転職します、となったりします。なかなか大変です。

こうした背景から、駐在員のミッションは「どこでも海外に行ける人材になって」というより「特定の地域、国に深く入り込める人材になって」というものに変わってくると予想しています。

その変化の中で、駐在期間は長く、同じ人が同じ地域に複数回駐在に行く、というジェネラリストとは逆のスペシャリストの方向に人事異動される傾向が強まると思っています。

③日本のモノを世界に出すことから、日本と世界のMixを目指す目標に

これは各社のビジネスモデルによると思いますが、単純に日本で考えて日本で作ったサービス・モノを世界で売っていくビジネスは一部で終わりを迎えつつあります。

途上国のベンチャーなどにも大量の資金が流入しており、サービス分野だけではなくモノづくりの分野でも、日系企業は海外の既存の競争相手だけではなく「海外のベンチャー」とも競争することになっています。

こういった状況から、駐在員は日本のモノを持って行くのではなく、駐在先で良いと思った会社とアライアンスを組む、地場に根差した製品・サービスを地場の企業と開発していく、といったことを進めていくことが並行して求められていくだろうと私は思います。

この10年間で日本の時価総額ランキングトップ10に入ってきたソニー、リクルート、ソフトバンク、日本電産が海外の企業への買収・投資を成功させている企業であるのは象徴的かなと思います。

(最も、ファーストリテイリングのように日本から世界に、という企業も伸びてはいますし、ソフトバンクをその文脈で語れるかは難しいですが)

2019年日本時価総額ランキング2021年日本時価総額ランキング

新たなミッションの下で求められる3つの人材像

さて、こうして私の考える新時代の駐在員のミッションをまとめてみました。

そのうえで、こうした駐在員に求められるミッションの変化を考えたとき、以下の3つのタイプで強みのある人材が、今後の駐在員の理想像になるのかなと私は考えています。

①地域スペシャリスト

特定の地域の商習慣、文化、言語などに精通して、その地域の商売上の重要人物とのコネクションなどを確立している人材です。現地社員よりも現地ネットワークがすごい、というような人物といえばよいでしょうか。

このレベルになる人はなかなかいないと思いますが、途上国で5‐7年くらい駐在している人でこういう人を見かけたことがあります。

②プロフェッショナルマネジャー

いわゆる駐在先でのCXOを担う人材です。

既に日本や他地域で類似の経験があり、海外の子会社や支店において、特定の事業課題を限られた駐在年数で解決することを請け負えるような人物というイメージです。

③新規事業立ち上げ人

海外での事業立ち上げ経験があるとか、新しいパートナーや買収先を見つけてきて新規事業を推進できる人材です。

異文化の中で信頼できる人を見つけ、面白いビジネスや自社と組み合わせてシナジーがありそうな事業を見つけてくる仕事で、本社の事業戦略・強みと海外のトレンド両方を理解し、そのうえで新規事業を進めていく馬力を持っている必要があります。

終わりに

以上が、私が考える「これからの駐在員に求められるミッション、人材像」です。

私もまだまだまだまだな段階ですが、せっかく書きましたので、「今後も更に駐在したい」とか「若手だがこれから駐在したい」という人は、こうした考え方もあると参考にしたり、若しくはいやいや違うだろと反論したりして、駐在員/会社員としての仕事に邁進していただければありがたいです。

ご意見その他もお待ちしています!

それでは、Have a nice day!


欧州駐在員コーカス
Twitter: @kkrchuzai
Blog: https://chuzai-investment.com/

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Posted by kkrchuzai