海外駐在中の資産運用は国内の資産運用と比べて不利?よくある疑問3つをまとめました
筆者は海外駐在中・在住中でも海外で資産運用を続けるのが良いのではと思っています。
その理由の一つは、実は多くの人が考えるより、国内での資産運用と比べて海外駐在中の資産運用もデメリットは少ない、と考えているからです。
本記事では「海外駐在中の資産運用は国内での資産運用と比べて不利なのか」という点で良くある疑問3つについてまとめています。
筆者の実体験・調査をもとに、意外と海外駐在中の資産運用もデメリットは少ないことを説明します。
疑問①海外での納税、帰任時の売却・納税が必要で不利なのでは?
海外駐在中は、日本の非居住者となる場合が多く、原則的に滞在国で投資利益に関する税金を納税します。
また、一般的に駐在期間が終了し帰任する時、現地の証券会社でそのまま投資の口座が維持できるとは限りません。むしろ、多くのケースでは帰任時に投資していたものを売却し、口座を解約して日本の口座などに送金することが必要です。
自分の考えるタイミングで売却できないと思うと、なんだか損するイメージがありますよね。
しかし、あり得るケースを整理すると、実は不利なケースはそこまで多くないです。
しかし、ケースを整理すると、実は不利なケースはそこまで多くないです。
大まかに言うと、国内での資産運用よりどのくらい不利かは、どのくらいの投資の期間(投資から売却までの期間)を想定しているか、滞在国の投資利益に対する税率は日本より高いか低いか、の2点に大きく影響されます。
そして、特に長期の運用を考えた場合、実は海外での納税が必要でもそこまで不利ではないと考えられます。
以下では、それぞれのケースにおいて有利不利がどう決まるかを説明します。
もちろん、個別の状況については滞在国に特化した専門家の資料や助言を参考にしてください
保有期間の短い(2-3年間以下)投資をするなら、滞在国の税率次第
投資の保有期間が2-3年以下で短い場合は、駐在する国の税制次第で有利不利が大きく変わります。
デイトレードとまではいかなくても、数週間の保有期間で売買するスウィングトレードや数か月ー1年間くらいの投資が好きという人はこのカテゴリです。
国によっては、日本よりも投資利益に対する税率が低く、こうした比較的短期の投資をする投資家が日本より(税制面で)得をする国もあります。
一方で、国によっては短期のトレードだと高い税率を課されたり、そもそも投資収益に対する税率が日本より高かったりして、不利なこともあります。
この辺りは、以前の記事でも少し触れましたので参考にして下さい。
詳細は割愛しますが、一般的には、海外駐在中の短期トレードは利益が出る場合でも損失が出る場合でも、国内在住時より税制その他で不利になるケースが多いと思われます。
滞在国の税制が有利だったり、毎年利益が出せそうな自信がある場合以外は、短期のトレードはやめておいた方が良いかなというのが私の意見です。
また、駐在中の短期のトレードで損失が出た時、日本であれば翌年以降に損失を繰り越して翌年以降利益が出た時に税額を圧縮できますが、海外居住中の損失は日本に帰国後には繰り越せないので、この点も注意する必要があります。
保有期間が長い投資をするなら、不利な場合は少ない
一方で、2-3年以上の長期投資を前提とするなら、実は海外での資産運用でも国内の資産運用と比較し不利な点はそこまで大きくありません。
まず、長期投資では、帰任時に現地証券口座を閉じないといけない場合、投資を一時的に売却する必要があります。(国によっては帰任後も口座を維持できる場合があり、この場合は日本での資産運用と比べて有利不利はありません)
帰任時にこの長期投資で利益が出ている場合は、納税の必要があります。
日本で長期投資していれば、本来そのタイミングで売却する必要はなかったはずです。ですが、駐在中の長期投資(積立投資など)は、帰国に伴う売却をする必要があり、その利益に対して課税されるため、資産が若干目減りしてしまうのです。
この場合は、国内で長期投資をしていた場合と比較して不利と言えます。(滞在国の税制によっては不利にならないこともあります)
一方で、帰任時にその長期投資で利益が出ていない場合は、一時的に売却が必要でも、通常納税の必要は通常ありません。
そういう場合は、現地証券口座を解約・売却し、その金額を日本に送金して再度長期投資で再投資すればよいです。日本で同じ投資をやっていても同じ資産額だったはずなので、有利・不利はありません。(帰任による手間は若干かかりますが)
まとめると、海外駐在中の長期投資は「帰任時に利益が出ていて、現地口座を解約する必要があり強制的な売却が必要な場合に限って」国内投資に比べると不利だと言えます。
しかし!だからといって、長期の資産運用をせず貯金として放っておいた方が良いのでしょうか?
よく考えると、この長期投資の場合が不利なのは飽くまで「国内で資産運用していた場合」と比較した時です
「海外駐在して長期の資産運用をしなかった場合」と比較すると、利益が出ているのですから、納税したとしても資産は増えています。つまり、「資産運用をやっていないよりは遥かにマシ」な状況なのです。
そう考えると、駐在時にも、中長期の資産運用をするのは意味がある、そう筆者は思っています!
この帰任時に長期投資を一時的に売却する際に課される税金は「駐在中の資産運用で仕方ないコスト」だと割り切ってもよいかなと個人的には思っています。
疑問②帰任時の日本への送金や為替の変動でお金が減りそう
日本への送金手数料は実はそこまで高くない
多額の送金をするとすごく費用が掛かるというイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
しかし、Wiseで送金すれば、だいたい送金額の0.6-0.7%くらいが手数料の相場です。
1,000万円を送金しても手数料は7万円程度です。
7万円という金額だけ見るととても大きいですね。
しかし、実は、0.7%程度は株式などで資産運用していると毎日変動してもおかしくない率なんです。そう考えるとそこまで大きい手数料率ではありません。
もちろん資産運用では、年間で平均3-5%のリターンが出ていればそれなりに優秀だと言えるので、それに比較すると、この送金手数料の0.6-0.7%はある程度の大きさになります。
しかし、長期投資を前提として、3-5年に1回、帰任時にしか送金しないと考えると、年間にならすと0.2%以下であり、許容可能なコストではないかというのが筆者の見解です。
運用中の為替レートは気にならないようにできる
最近のオンライン証券では、株式ETFなどで、ドル建て、ユーロ建て、ポンド建て、円建てなどの商品が色々あります。入金元の通貨が何であっても、様々な為替建てで運用が可能です。
特に海外のオンライン証券では様々な株式ETFが扱われているので、その選択肢は広がります。
ですので、海外在住中の運用での為替リスクは、自分でコントロールしやすくなる、と考えた方が良いです。
多額の現地通貨建て投資を行うのが嫌なら、ドル建ての株式ETFに投資すればよいのです。
日本円でのリターンを重視したいのなら、日本円建てでの株式ETFを買えばよいです(日本株に関しては割とあります)。
運用中の為替レートについては、こうやってコントロールすると気にならなくなると思います!
また、赴任中の為替リスクがどうしても気になる人は、FXを組み合わせて資産運用の為替リスクを調整できます。上級者向けですが、たまにやっている人もいますね。
尚、海外在住者のFXは、口座開設や入金などがとても楽なeToroがお勧めです。以前書いた記事をご参考まで。
帰任時に、米ドル、ユーロ、ポンドなどの外貨のまま日本の口座に送金し、日本で保有・運用を継続することも可能です。
本記事では紙面の都合上割愛しますが、資産運用上も、円だけでなく外貨建てでの投資も保有して分散をはかる方が良いので、筆者もこの方法を使う予定です。
疑問③すごい手間や税理士費用がかかりそう
海外駐在中の資産運用に関するハードルは、以前の別記事でまとめましたのでご参照下さい。
一般論で言うと、使いやすいオンライン証券などのサービスが拡大しており、海外在住中の資産運用に関する手間はどんどん少なくなっている状況です。
また、現地での納税プロセスや税理士を起用したときの費用についても、たいていの国には日本人向けの日本人税理士の方がいらっしゃって、問い合わせをすれば直ぐ教えてくれます。
筆者個人の個人的な経験では、投資収益に関する税務申告の手続きを現地税理士に任せても、大した費用は掛からない、という感じでした。
この辺りは、実は「案ずるより産むが易し」の世界かなと思っています。
(海外生活だとこういう状況はよくありますね…笑)
海外駐在中に資産運用する気があれば、現地の専門家に気軽に一度問い合わせてみると良いと思います
また、資産運用・株式投資をする時の手間については、筆者の経験ではむしろ日本より海外の方が楽でした。
海外のオンライン証券の方が、商品ラインナップが海外株式など含めて日本の証券会社より多く、取引手数料も安く、Webやアプリでのサービス(画面等)もわかりやすいんです。
英語で記載されているという点を割り引いても、日本人にとってもかなり使いやすいかなと思います。
この辺りは、多言語対応しているサービスであればあるほど、直感的に使いやすい感じになっているのかなと思います。
Trade Republicという欧州で人気のオンライン証券もかなり使いやすいです。以前レビューをしたのでご覧ください!
終わりに
筆者は、海外駐在・赴任中でも資産運用を出来る限り継続するのが良いと思っています。
この記事で書いたように、海外駐在・赴任中の資産運用には投資のスタイルによっては国内より不利な点もあります。簡単になってきているとはいえ、手間もかかります。
しかし、一般的に3₋5年と決して短くない駐在期間において、資産運用をしない機会損失を考えると、やはり駐在中の資産運用は考えた方が良いテーマだと思うのです。
また、最近は駐在期間が各社で長期化傾向にあるようにも聞いており、2022年になり円建てでもらっている給与が円安で目減りしたり、インフレで実質的な価値が目減りするなどしており、更に資産形成は大事なテーマになると思います。
ここ数年で、オンライン証券などの多くのサービスが更に使いやすくなっています。税務申告をサポートするアプリすら欧米では出てきています。
海外駐在員、在住者が資産運用をするハードルはどんどん下がってきています。
このブログでは引き続き、色々と海外駐在員・在住者の資産運用に役立つサービスの紹介や、整理・考え方を発信していければと思っております。皆さんの資産運用を考える一助になれば幸いです!
それでは、Have a nice day!
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