ANDART(アンドアート) vs Masterworks(マスターワークス) 日米のアート投資プラットフォームの徹底比較

資産運用

本記事では、日本でサービスを行っているANDART(アンドアート) と、米国発で日本からでも投資可能なMasterworksの2つのアート投資プラットフォームについて、サービス内容を徹底比較します。
また、両方のプラットフォームを使っている筆者が、どういった人にどちらのサービスが適切かについてもまとめています。

基本情報

先ずは基本情報から比較していきます。

 会社名株式会社ANDARTMasterworks.io LLC
所在地日本/東京米国/ニューヨーク
設立2018年2017年
資金調達額/評価額2.8億円/60億円弱*約143億円/不明(1,400億円以上*)
従業員数約50人約180人
会員数不明(開示なし)35万人以上
アート販売/運用総額不明(開示なし)500億円以上
事業地域日本全世界
監督官庁不明(なし?)SEC (米国証券取引委員会)
2022年に各社HPより抜粋。*評価額は報道より。Masterworksの評価額は10億ドル以上との報道あり

ANDARTは日本だけで展開しているサービスです。規模感・購入可能作品数はまだ小さいなという印象です。
また、両社とも資金調達状況は十分に見えますが、どのくらいサービスが存続するかというサービスの確実性についてはMasterworksの方が一歩先に行っているように見えます。

一方、Masterworksは米国発で資金調達額も大きいですが、現状は日本語の対応はありません
投資する作品の詳細などは英語で案内される為、英語が苦手な人はGoogle翻訳などの翻訳ツールを使う必要があります

ただ、Masterworksは米国証券取引委員会(SEC)に届け出ているので、監督官庁がはっきりしているのは安心感があります。

サービス内容

次にサービス内容を比較していきます。

 会社名株式会社ANDARTMasterworks.io LLC
アート保有形態共同保有権デラウェアLLCの種類株式
アート選定基準不明(開示無)プロが資産運用として選定
会員登録費用不要不要
最低投資金額1万円(作品による)500ドル
投資金額単位1万円(作品による)20ドル
オーナー間売買販売後、通常は可能米国居住者のみ可能(全作品)
投資期間無制限(過半数同意で投資売却)3‐10年間
作品の売却オーナー過半数の賛同で可能Masterworksが決定
優待あり(作品による)会員限定ギャラリーなど
各社HPより抜粋(2022年8月現在)

サービス内容は同じアート投資プラットフォームといってもかなり違いがあるのがわかります。

以下で詳しく解説します。

アート作品の保有形態・選定基準

ANDARTの規約を見ると、アート作品は共同保有権(所有権)として保有するという記載になっています。共同保有権については国内の不動産保有などで使われるもののようです。
作品の選定基準は特に記載はありませんでした。ただ、以下でも触れますが有名作品・日本人作家の作品を多く取り扱っています。

MasterworksはデラウェアLimited Liability Company(LLC、有限責任会社)という不動産投資やファンド投資などでもよくつかわれる形式を使っています。投資家は「アート作品を保有するLLCの種類株式を保有」します。
また、Masterworksの特徴として、プロの調査チームが、資産運用の観点から値上がり益の見込める作品を選んでいます。過去に投資したアート作品でも、既に値上がりして売却済のものいくつかあります

会員登録費用

会員登録費用はどちらも無料です。

最低投資金額

最低投資金額はANDARTの方が安く、1万円から投資可能で、1万円刻みです。

一方、Masterworksは1作品当たり500-1,000ドル(約6-13万円/作品による)から投資可能で、20ドル(約2,500円)刻みで投資金額を設定できます。

Masterworksの方が最低投資金額が高いですが、投資金額は細かく設定できます。

オーナー間売買

ANDARTは会員への販売が終了した(売り切れた)作品は順次プラットフォーム上でオーナー間売買が可能となる場合が多いようです。このオーナー間売買を通じて当初買った価格より高く共同保有権が売れた場合利益が出ます

Masterworksは現状、オーナー間売買が出来るのは米国居住者で米国の銀行口座を持つ人のみです。

但し、担当者に聞いたところ、米国外でもオーナー間売買が出来るよう監督官庁のSECに申請中のようです。

投資期間

ANDARTは、一定の期間後にアート作品を外部に売却する可能性があると記載しています。
一方、共同保有権の取得なので、過半数の共同保有権を持つオーナーが賛同しない限り、外部への売却は行われないようです。
このため、投資としてみた時、利益を出すのはオーナー間での共同保有権の売却が基本となりそうです。

Masterworksは、3-10年間を投資期間としています。
Masterworksでは、自社のプロのチームが、この期間中に適切な金額で売却できると判断したタイミングで、外部のオークションなどを通じてアート作品を売却します。そして売却代金を投資家で持ち分割合に応じて分配されます。
米国居住者以外はオーナー間売買ができないので、3-10年間の投資期間中にMasterworksが売却したタイミングで、利益(若しくは損失)が確定します。

Point
  • ANDARTでは、投資として利益が出るのは基本的にオーナー間売買を通じた取引
  • Masterworksでは、米国在住者以外は自由に売買ができないため、投資として利益が確定するのはMasterworksがそのアート作品を外部に売却したタイミング

優待

ANDARTは鑑賞会などのイベントを行うとしており、アート作品の保有を楽しむことができます。

一方で、Masterworksは特別な優待などはありません。あくまでアート作品の値上がり益を狙っていく投資になります。

投資可能なアート作品

次に、投資可能なアート作品を比較してみます(2022年6月現在)。

 会社名株式会社ANDARTMasterworks.io LLC
取り扱いアーティスト(海外)



KAWS
Jean-Micheal Basquiat
Banksy
Andy Warhol
David Hockney
Damien Hirst、他
Pablo Picaso
Jean-Micheal Basquiat
Banksy
Zao Wou-KI
Mark Rothko
Keith Haring、他
取り扱いアーティスト(日本)奈良美智
草間彌生
山田歴
ロッカクアヤコ
安井鷹之介、他
奈良美智
草間彌生
白髪一雄
(他は確認できず)
作品の金額レンジ30万円ー2,000万円
(300-600万円が多い)
0.5百万ドルー10百万ドル
(0.8百万ドル-5百万ドルが多い)
各社HPなどから調査

両方のプラットフォームで取り扱っているアーティスト名に関しては、有名どころはそこまで差はありません。
例えば、どちらもBanksy、Basquiate、奈良美智などの現代アーティストの作品を取り扱っています。

但し、作品の金額レンジは大きく違います。
ANDART(アンドアート)が、比較的低価格の作品(高くても数千万円)を取り扱うのに対し、Masterworksは5-15億円程度の作品が主となっています(4-12百万ドル)。

これは、プラットフォームの規模感(会員数等)や目指す方向の違いによると考えられます。
ANDARTは手の届きやすい新進気鋭の海外・日本人の若手アーティストの作品を取り上げる傾向があります。
一方でMasterworksは、現代アート作品の中でも一定程度評価が確立されたアーティストの作品を主に取り扱っています

それぞれ、どういう作品を購入したいかによって好き嫌いはあると思います。

コスト・透明性

細かくなりますが、コストとその透明性について比較してみます。

 会社名株式会社ANDARTMasterworks.io LLC
アート作品の取得費用不明(開示なし)通常、作品価格の5-10%*
プラットフォーム上での
投資/取得費用
サーチャージ10%+消費税10%
(=21%)
なし(振込手数料等のみ)
プラットフォーム上での
作品保有の関連費用
なし投資額の1.5%/年間
(作品売却時に差し引かれる)
アート作品売却時の費用なし投資”利益”の20%(作品売却時)
取得価格に関する参照情報開示なし過去の類似作品の取引価格推移
直近のオークション出品数、取引額
各社HPより抜粋

*通常、アート作品を入手するためのBrokerに5%程度、保険や搬送に5%程度の費用が掛かるとのこと。この金額は既にプラットフォーム上の値付けに反映されており、こうした外部に払う必要経費以外のFeeをMasterworksが上乗せすることはないとのこと

ANDARTは、共同保有権の購入のたびに10%のサーチャージ及び消費税10%のコストがかかります。つまりコストは10,000円の共同保有権の購入に対し2,100円となり、21%となります。売却の時には費用はかからないようです。

ANDARTのコストの透明性については、全体的に開示が少なく感じました。
例えば、以下の点については、プラットフォーム上での開示・FAQなどがありません。

  • それぞれのアート作品の保有・取引に関する様々なコストを誰がどう負担しているのか
  • ANDARTがアート作品を購入した金額とプラットフォーム上で個人に販売する際の金額の差(アート作品の取得費用等)がどのくらいあるのか
  • そもそもそのアート作品はいくらが適正価格だと考えているのか(過去の類似作品の価格はどうなっているのか)


Masterworksのコストは年間で投資額の1.5%と安くはないです。
ただ、アート作品の保有・取引に関する様々なコストや、目利き・一流のアート作品購入機会へのアクセスを考えると許容できる範囲かと思います。

また、最終的に外部にアート作品を売却した時の利益に対し20%のコストがかかります

利益に対して20%は大きいように見えます。しかし、Masterworksはアート作品の売却時の利益に対し20%を成功報酬として受け取れるため「将来値上がりして利益が出る良い作品を目利きし、プラットフォームで販売する」という強いインセンティブがあります

一般人がアート作品の値付けについて理解するのは難しいので、このように「Masterworksが投資家と同じインセンティブを持ち、同じ方向(値上がり益を得る)を見ている」設計はむしろ評価できると思います。

逆に言ってしまうと、ANDARTは会員にアートの共同保有権を販売すればそこでサービス対価は受け取れるため、ANDARTでは投資家の値上がり益に対するインセンティブはありません。

Masterworksのコストの透明性については、SECに届出・登録されていることから詳細にわたって契約書の開示がある他、ホームページのわかりやすいところにコストの記載があります。
更に細かいところも営業担当(Advisorと呼ばれています)に簡単に質問が可能なので、透明性は高いです。


総じて考えると、コスト面では色々な違いはありますが、どういった意図、選定基準でアート投資をするかという観点ではそれぞれ合理的な費用水準ではと考えられます。

一方で、コストの透明性という観点ではMasterworksの方がお勧めできます。

ANDARTとMasterworks、アート投資ではどちらが良いか?

それぞれ違ったサービスなので、どちらのサービスが良いかは、アート投資に求めるものによる、と言えます。

それぞれのサービスのまとめ、ポイントは以下の通りです。

ANDARTまとめ

ANDARTは、優待での鑑賞会やイベントなどを企画しており、「日本人アーティストや新進気鋭の現代アーティストのアートを保有することを気軽に楽しみたい」という人向けと言えます。
一方で、ANDARTは資産運用という観点でリスクは高めです。
1万円から投資できるのは非常に良いですが、①投資対象はリスクが比較的高い新進気鋭のアーティスト等の比較的低額なアート作品であり、②投資時に確定してかかってしまう費用が21%と高く、③共同保有権であるため永久に外部に売却されないのですが、会員間売買しか投資をやめる方法がないし、会員間売買で適切な値が付くかは不明です。

Masterworksまとめ

Masterworksは、「現代アートの一流作品への投資を資産運用に取り入れたい」という人向けだと言えます。
一方で、Masterworksは資金や多少の英語力が必要なことと「アート作品を保有する楽しみ」はあまり感じられないことがデメリットです。
具体的には、①アートイベントは現状米国のみで行きづらい、②最低投資金額が500-1,000ドルからで、ある程度資金が必要かつ3‐10年間は売却できない*、③初回のみ米国時間帯に英語で担当者と簡単な会話をする必要がある、などが難点です。
*日本で会員間売買が可能になればもっと早く売却可能

Point:どういう人に向いているのか?
  • ANDARTは、投資・資産運用という観点より、アートを保有することを気軽に楽しみたい人向け
  • Masterworksは、アート保有を楽しむより、アート投資による資産運用・投資利益を追求したい人向け


因みに、筆者はANDART、Masterworks両方のプラットフォームでアートに投資をしています。

実感としても、ANDARTは楽しむためのアート投資プラットフォームだと思います。優待を意識して「アート投資を楽しむ」ために、すごく気に入った作品に入れるという使い方をしています。

一方、Masterworksはドライに資産運用をするためのアート投資プラットフォームです。
こちらは作品の好き嫌いというより、資産性がありそうかを自分なりにMasterworksの提供資料や自分で調べた情報などを基に判断して、一定金額を積み立てに近い形で投資しています。

どちらもそれぞれの良さがあると思います。

終わりに:質問等あれば何でも聞いてください

筆者はアート投資を最近始めたひよっこです。
本物の絵画も2枚程度しか持っていません。

けれど、こうしたプラットフォームでアート投資を始めてその面白さにはまりつつあります
アート投資は日本ではまだ全然根付いていないというデータもあり、もっと多くの人が楽しみ、資産運用に適切に組み入れられたら、とても素晴らしいと思っています。

ですので、本記事などを読まれて、若しアート投資にご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら気軽にご連絡ください!Masterworksに登録してみたいけど英語が苦手で、というような話でも構いません。筆者に出来る範囲でアドバイス等できればと思います!

一緒にアート投資を勉強して資産運用に組み入れていきましょう!

それでは、Have a nice day!

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特に断りがない限り、情報はMasterworksのHPやプレスリリース、FounderのScott Lynn氏インタビューなどから筆者が要約しております。
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Posted by kkrchuzai